皆さんは自分の血圧がどのくらいかご存知ですか。高血圧はいちばん身近で、患者数が最も多い疾患です。男女とも60歳代では50%以上、70歳代では60%以上が高血圧です。加齢とともに増加しますが、男性では30歳代でも20%おり、若年であっても油断できません。高血圧はほとんどの場合自覚症状がなく、長い年月をかけて動脈硬化を進行させ、脳卒中や心臓病、腎臓病などを引き起こします。このように脳心血管疾患の最大の原因となる高血圧ですが、今年治療指針が新しくなりましたので、ご紹介します。
血圧を判断するには、一般に診察室血圧と家庭血圧があります。家庭血圧の方が診察室血圧より低いため、基準では家庭血圧の方が5㎜Hg低く設定されています。家庭血圧は、診察室血圧より信頼性や再現性が高いことから指標として重要になりました。具体的な測定方法ですが、座って1〜2分の安静後、上腕用の血圧計で原則2回測定して平均をとります。測定は朝(起床後1時間以内)と晩(就寝前)に行い、1週間の平均値を評価します。
高血圧の診断基準は従来と変更なく、[表1]のとおりです。
収縮期血圧
拡張期血圧
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診察室 血圧 |
140以上
かつ/または
90以上
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家庭 血圧 |
135以上
かつ/または
85以上
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これまではどこまで厳格に血圧を管理するのがよいかが課題でしたが、国内外の試験の結果、130/80㎜Hg未満への血圧管理が脳心血管疾患のリスクを下げることが分かりました。このため、新たな指針では、成人の降圧目標値がこれまでより10㎜Hg引き下げられ[表2]となりました。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
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75歳未満の成人 | 130/80未満 | 125/75未満 |
75歳以上の高齢者 | 140/90未満 | 135/85未満 |
減塩(1日6g未満)、運動、肥満の解消など生活習慣の修正が基本ですが、改善しない場合は薬による治療を開始します。
まずは自分の血圧を知って、早めに高血圧に気付くことが大切です。特に治療中の方は家庭血圧を記録して、ご自身の血圧管理に積極的に関わっていただくことをお勧めします。
(加藤 結花 23.01.04)