血清クレアチニンは腎機能(腎臓のろ過機能)を調べるための検査です。
クレアチニンの「もと」はクレアチンという物質です。体の中にあるクレアチンのほとんどは筋肉内にあり、酵素の働きでクレアチンリン酸となって筋肉を動かすエネルギー源となります。クレアチンリン酸が代謝されてできる老廃物がクレアチニンです。クレアチニンは筋細胞から出て血液中に入ると腎臓の糸球体(※)でろ過されて再吸収されずにそのまま尿に排泄されます。体内でつくられるクレアチニンの量はほぼ一定なので腎臓の働きが低下するとろ過される量が減って血液中の濃度が上昇します。
血清クレアチニンは簡便で有用な腎機能検査ですが、体内のクレアチニン量は筋肉量に比例するため、同じ腎機能でも筋肉量の多い人のほうが血清クレアチニン値は高くなります。一般的に男性は女性より筋肉量が多く、高齢者では年齢とともに筋肉量は減っていきます。このため血清クレアチニンだけでなく、年齢と性別の情報を加えた推算糸球体ろ過量(eGFR)が腎機能の評価としてより有効であり、広く使われるようになっています。
健康診断で注意しなければならないのは、ハードな筋トレを行っている人や筋肉増強目的でクレアチンをサプリメントとして大量に摂取している人、また加熱した肉を大量に摂取したときなどはクレアチニン産生量がとても多いため血清クレアチニン値が高くなることです。また、服用しているお薬の影響で血清クレアチニンが少し高くなる場合もあります。いずれの場合も血清クレアチニン値が1・5mg/dLを超えることはほとんどなく基準値より少し高値ということが多いですが、腎臓の病気が隠れている可能性もあります。血清クレアチニン値の上昇が腎機能低下によるものなのか、筋肉量など他の原因によるのかを鑑別するのには血清シスタチンC検査が有効です。
健康診断で血清クレアチニン検査の結果が基準値より高い場合は「筋トレしているから高いのだろう」とか「昨日焼肉をたくさん食べたから高くなったのだろう」などと思い込まずに、医療機関で検査を受けるようにしましょう。
※糸球体は細い毛細血管が毛糸玉状に丸まってできています。左右の腎臓にそれぞれ約100万個あり、ここで血液がろ過されます。
(寺邑 朋子 22.07.01)