• Home
  • やさしい病気の話

やさしい病気の話

今回は『原因にはさまざまな要因が考えられます−むくみについて』と題して柳田弘人院長が話題を提供します。

外来や介護施設などで脚のむくみを訴える高齢の患者さんによく遭遇します。むくみ(浮腫)とは、血管内の水分が組織にしみ出てたまってしまった状態です。本来血液中の水分は、細胞に酸素や栄養を送り届け、二酸化炭素と老廃物を回収して戻ってきます。ところが、何らかの原因で戻ってこられなくなってしまうのです。

片側の脚だけがむくんでいるなら脚の疾患を考えます。血管の病気や炎症などが思い浮かびます。急な発症で片側の脚が赤くパンパンなら深部静脈血栓(けっせん)かもしれませんし、骨盤やそけい部の手術の既往があればリンパ浮腫を考えます。糖尿病など感染しやすい病気の人ならどこからか菌が入って蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こしたのかもしれません。

両側の脚がむくんでいるなら全身の病気を考えます。心不全、腎不全、肝疾患やホルモンの病気などです。これらはレントゲンや血液検査などで診断がつきます。

これらに当てはまらないむくみが以外と多いのです。まずは薬の副作用によるむくみがあります。一部の降圧剤や鎮痛剤、漢方薬などは注意が必要です。

他には低栄養によるむくみもあります。たんぱく質の一種であるアルブミンが血液中に存在することによって血管内と血管外の水分量が調節されています。アルブミン量が減ることによって浸透圧の関係で水分が血管外に流れむくんでしまうのです。アルブミンは肝疾患や腎臓病などで減少しますが、栄養不足でも減ってしまいます。高齢になり食が細くなったり、嚥下(えんげ:口の中の食物を胃にのみ下すこと)の問題や、一人暮らしや高齢の夫婦だけでの暮らしで食事の準備がうまくできないなどの原因があります。高たんぱくで栄養価の高い食べ物をバランスよく取ることが大切です。

また長い時間座りっぱなしで脚を動かさないでいると脚の静脈の圧が上がってしまいますし、脚の筋肉を使わないため筋肉が持つ血液を循環させるポンプ機能が働かず血液がうっ滞してむくんでしまいます。歩ける人であれば少しでも歩きましょう。座ったままでも足をゆっくり動かしたりマッサージすることも有効です。心臓に問題がなければ脚を高くして横になるのもいいと思います。

その他、熱中症を気にするあまり塩分と水分の取りすぎと思われる例もありますので、注意が必要です。

(柳田 弘人 21.09.01)