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やさしい病気の話

今回は『早期診断・早期治療が重要です−疲労骨折と脆弱(ぜいじゃく)性骨折』と題して後藤 伸一院長が話題を提供します。

骨折の分類

骨折は正常な骨に強力な外力が加わって起きる一般的な外傷性骨折と、微小な力が繰り返し加わることにより発生するストレス骨折に分けられます。さらにストレス骨折には正常な骨に対して繰り返し外力が加わったことにより発生する疲労骨折と骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などで強度が減じた骨に通常では骨折をきたさないほどの微小な外力で起きる脆弱性骨折があります。

疲労骨折

疲労骨折は、歴史的には兵士に好発する疾患として報告されてきました。しかし、現在スポーツの普及によりスポーツ損傷の一つとして報告されることが多くなり、整形外科クリニックの外来でも高頻度に遭遇します。すべての年代に起こりう る骨折ですが、特に10代の成長期に多く16歳をピークとします。11歳から22歳のアスリート2271人における発症部位では腰椎(ようつい)が半数以上、下肢が40%程度と腰椎と下肢(かし)でほとんどを占めている研究結果(深井ら:疲労骨折の疫学. 整形・災害外科.2016;59(119),1381-1386.)があります。疲労骨折を診断するためには詳細な病歴聴取と画像検査が必要です。疲労骨折の原因は、同一部位に繰り返し外力が加わることであるので、治療はその部位に外力が加わらないようにすることで行います。つまり、多くの疲労骨折は、原因となったスポーツ活動を休止するとことで治癒することがほとんどです。しかし、休止中は単に安静にするだけではなく、患部外のトレーニング、柔軟性の獲得、動作指導などのリハビリテーションを行い、再発予防に努めることが重要です。

脆弱性骨折

脆弱性骨折は最近、「いつのまにか骨折」といわれています。骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折は高齢者の要介護の原因となる代表的な病気です。一度発生すると反復して骨折を生じる危険を伴うため、生命予後にも強く影響を及ぼします。胸椎(きょうつい・背中)、腰椎(腰)、股関節(ももの付け根)、膝周辺などに起きますが、特に胸椎(背中)、腰椎(腰)に多く、60歳以上の方の背部痛、腰痛が起きた時は脆弱性骨折の可能性を念頭に置かなければいけません。レントゲン写真ではわかりにくいことも多く、本骨折を疑った場合はMRIが必要になります。脆弱性骨折は骨折に対する治療だけではなく、原因となる骨粗鬆症に対する治療を強化することが重要であり、骨を強くする皮下注射 を行うことが多いです。

疲労骨折、脆弱性骨折ともに早期診断、早期治療が重要であり、心当たりのある方は早めに近医を受診してください

(後藤 伸一 21.03.01)