床ずれ、と聞いて皆さんどのような印象をお持ちでしょう。「年をとって寝たきりになるとできるものだから仕方がない」「治らないものだ」といったイメージではないでしょうか。床ずれとは、正式には褥瘡(じょくそう)という名前の病気で、皮膚が圧迫される部位の血流が悪くなって生じる皮膚の壊死(えし)・潰瘍(かいよう)のことです。年齢によっておこるものではなく、同じ姿勢で動けない時間が長くなると誰にでも生じる可能性があります。具合が悪くなり寝たきりになってしまった場合や、食が細くなり栄養が足りていないと数日で深い褥瘡を発症することもあり、注意が必要です。
褥瘡は、周囲の皆さんの協力の下、適切な治療で改善できる病気です。褥瘡の治療は、外用剤が基本となります。傷の処置には消毒の必要はなく、石けんの泡で洗ったあとに適切な外用剤を使用して、毎日の処置を行うこと、そして栄養をしっかりとって傷に圧がかからない体勢をとることが重要です。怖くて洗えない方もいますが、細菌が感染すると、さらに拡大する可能性がありますので、しっかりと汚れを洗い流すことが重要です。
重症な褥瘡の中には、傷口よりも皮下の空間が拡大したポケットを形成することがあります。ポケットが治りづらい場合は、外科的に切開して開放する場合や、また陰圧閉鎖療法といった特殊な方法で治療することもあります。
褥瘡は、発生しないための予防が最も重要です。同じ姿勢を長くとらないことや、寝具についても布団や硬いマットレスではなく、ウレタンなどの柔らかいマットレスやエアマットレスの使用などが効果的で、介護保険制度を利用して対策できます。皮膚の保湿などの日々のスキンケアによって、自宅での予防を心掛けていただきたいと思います。
大曲厚生医療センターでは、週1回褥瘡外来を行っており、施設入所中の患者さんや治りづらい褥瘡の患者さんを診察しています。ご家族で寝たきりの方や座っている姿勢が長くなっている方がいたら、おしりや背中など、圧迫されている部分に傷ができていないか、皮膚の色が変わっていないかを確認し、適宜、体の向きを変えるなど褥瘡の発生に注意してください。また気になるところがあれば、早めにかかりつけの医師や医療機関に相談することをお勧めします。
(石河 軌久 20.03.02)