男女問わず、お腹が痛くなる原因は多岐にわたります。今回は女性の腹痛の原因の中で、緊急に治療が必要になる病気に関してお話しいたします。
まずは「異所性妊娠」です。「異所性」と言われてもピンとこない方も多いと思いますので、まずは正常の妊娠について少し解説をしたいと思います。妊娠の成立とは卵巣で排卵が起こり、精子と受精し子宮内で着床することで成立し、子宮内で赤ちゃんは育っていきます。これが通常の妊娠です。では「異所性」とはどういうことでしょうか。子宮外、つまり本来着床すべき場所でないところに着床してしまうことを言います。全妊娠の約1%に起こり得ると言われています。子宮でないところ、卵管、卵巣、腹腔内に妊娠が成立すると始めは無症状のことが多いのですが、時にお腹の中で破裂し、大量出血をしてしまい命に危険が及んでしまうことがあります。治療としては症状の程度によりますが、出血が止まらない場合は手術が必要となります。そのため、「妊娠したかな」、「生理がこないな」、「お腹が痛いかな」と思った時は産婦人科を受診しましょう。
次に緊急度の高い病気として卵巣が腫れてしまい、その卵巣自体がねじれてしまう病気があります。これを「卵巣の茎捻転(けいねんてん)」と言います。ねじれると卵巣に通っている血のめぐりが悪くなったり、卵巣自体が腐ってしまったりと問題が生じます。そのため、すぐに手術によって捻転を解除、もしくは卵巣自体を嫡出する必要があります。卵巣自体が腫れているかどうかは婦人科の検診で超音波の検査をしないとわかりません。卵巣自体が腫れているだけで、ねじれていない場合、症状もなく発見が遅れることもあります。定期的に市で行っている婦人科検診の受診をお勧めします。
現在、大曲厚生医療センターでは、全身状態が安定している場合「異所性妊娠」、「卵巣の捻転」に関してほぼ全例、腹腔鏡下での手術にて対応しています。腹腔鏡下での手術は5ミリ〜1センチ程度の傷数カ所のため、手術後の回復が早く傷が目立ちません。今回は女性の緊急度の高い病気、「異所性妊娠」、「卵巣の捻転」についてのお話でした。お腹が痛くなった時は我慢せず、最寄りの医療機関を受診しましょう。
(長尾 大輔 20.01.06)