私が小学生のころ、父は幼い子どもが「お相撲さんなの?」と質問するような体形をしており、付き合い酒も多い人でした。そんな父を苦しめていたのは足や膝の痛風で、真っ赤に腫れ上がった関節では立つのも困難だったことを覚えています。
痛風は尿酸が関節や腱などに付着し、それが悪さをして炎症を引き起こす病気です。尿酸はプリン体から作られ、そのプリン体の7〜8割は体内で合成されているといわれています。プリン体カットのビールが有名ですが、食品やアルコールに由来するプリン体は案外少ないのです。ここでビールを何リットルも飲んで良いと思ったあなたは要注意です。そんなに飲むとプリン体がやっぱり過剰になってしまいます。夏はビールで冬は熱燗という人の血中尿酸値は夏の方が高い傾向にあります。さらにアルコール自体に尿酸を上げる作用があるので飲みすぎは禁物です。また、肥満やストレスも尿酸値を上げる原因として知られています。
しかし、尿酸値が高いから発作に即つながるわけではありません。関節や腱の尿酸塩結晶を白血球が何らかのきっかけで取り込むことにより発作が始まります。発作が起こり始めたとき、多くの患者さんはその日からお酒を止め、数日後に痛みが激しくなった段階で受診します。このとき、尿酸値が既に正常化していることもありますが、それまで長年にわたり関節や腱に溜まった尿酸は簡単になくなりません。さらに断酒して血中尿酸値を急に下げたことにより、溜まっていた尿酸が関節腔に出てきて発作が激しくなることもあります。
発作中は尿酸の血中濃度を変化させず、痛み止めを投与するのが原則です。発作が落ち着いた後、なるべく節制した生活をしてから尿酸値を測定し、このとき基準値を超えていた場合には薬の出番です。人によっては生活習慣を改めることにより徐々に尿酸値も下がり、薬も不要となります。
偽痛風という痛風と似た病態があります。尿酸の代わりにピロリン酸カルシウムが蓄積して発作を引き起こします。X線撮影で石灰沈着が認められ、膝に多いとされていますが、肩、肘、手、首などにも発作がおこります。首の偽痛風の場合、後頭から後頚部痛が顕著で首を回すことが困難となります。偽痛風は痛風と違って予防法が確立されていませんが、発作に対して治療がとても有効な疾患です。
痛風と偽痛風はともに発作を繰り返すことが多い疾患ですので、発作時には早めに医療機関を受診してください。
(三浦 俊一 18.06.04)