人の耳には聞こえない周波数の高い音を「超音波」と呼んでいます。医療用の超音波装置では、約200万〜4000万ヘルツの超音波を用います。人に聞こえる周波数は20〜2万ヘルツであることを考えると、非常に高い周波数です。これを使って、体の中から反射して返ってくる音(エコー、こだまともいう)を画像にしています。肝臓と腎臓など、異なる組織の境界で超音波が反射して返ってきて、画像に構成して表示します。超音波装置は、まさに目で見る聴診器といえます。おなかの中は、肝臓、すい臓などが「沈黙の臓器」といわれるように症状の出にくい臓器があります。それらの病気を知るためには、採血による血液の検査以外に画像でおなかの中をみる方法が必要です。
日本人は体質的に2型糖尿病になりやすいといわれており、実際、糖尿病は増えてきています。糖尿病はすい臓の機能が低下した状態と皆さん理解していると思いますが、実は肝臓も大きく関わっています。最近は糖尿病は肝臓の病気であるともいわれ、糖尿病の状態が続くと肝臓に脂肪がどんどんたまって脂肪肝が強くなり、お酒を飲まなくとも肝硬変のような、硬い肝臓になっていき、ついには肝臓がんも発生しうることが分かってきました。肝臓がんは進行するまでほとんど症状はありません。ときどき検査をするということが大事になります。
超音波で、肝臓の硬さの程度を調べるシアウェーブエラストグラフィ(SWE)という方法が近年、開発されました。SWEは通常の超音波検査と同じように、造影剤を使わず、簡単にできるものです。肝臓の硬さをある程度予測できます。まだ始まったばかりで、全体に普及はしていませんが、これからどんどん使いやすくなって状態の把握や病気の治療方針を決める際に役立っていくことになるでしょう。また、精密検査の範囲ではありますが、超音波には造影剤を用いて血流の情報を加えてよく見るという、造影超音波という方法もあります。機械は進歩しています。私たちはそれを上手に利用して、健康を維持するために役立てたいですね。
(中島 裕子 17.12.25.)