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やさしい病気の話

今回は『「節度ある適切な飲酒」を健康的に楽しもう―慢性膵炎(すいえん)について』と題して荒井 咲子先生が話題を提供します。

大仙市では平成26年、大仙市地元酒等乾杯推進条例が制定されました。「四季折々に美しい表情を見せる自然豊かな田園交流都市である本市で製造された地元酒等による乾杯を推進することにより、地元酒等を愛飲する気運を醸成するとともに地元酒の消費拡大を図り、もって原材料生産等の地場産業振興に資することを目的とする」――とありました。なかなかしゃれた条例です。

さて、健康を考えた上でどの程度がお酒の適量といえるのでしょうか。今回はお酒に関連のある病気の一つである「慢性膵炎(すいえん)」についてお話しします。

膵臓は重さ100グラム程度の比較的柔らかい臓器で、みぞおちの奥、背中側にあり、食物を消化する消化酵素を十二指腸に分泌する外分泌腺と、血糖を調節するインスリンなどのホルモンを血中に分泌する内分泌腺からできています。この膵臓が何らかの原因で自己消化(自らを溶かしてしまうこと)を起こし、これが長期間にわたり繰り返し起こるのが慢性膵炎です。炎症を繰り返すことで膵臓は硬く小さくなり本来の機能を失ってしまいます。

【原因】慢性膵炎は男性に多い病気で、女性の約2.5倍の頻度です。日本人では、男性の場合、慢性膵炎の約4分の3がアルコールによるものといわれており、女性の場合は、原因がよく分からないもの(特発性)が2分の1、アルコールによるものが3分の1とされています。一般的には1日にアルコール80グラム以上(日本酒で4合弱)を10年間以上連日摂取し続けると、慢性膵炎の発症の危険が高まるといわれています。

【症状】慢性膵炎の症状はその進行状態によって異なりますが、その初期には暴飲暴食を引き金にみぞおちの痛み、背中の痛みが起こり、進行すると食事に無関係に痛みが出現するようになり、ついには膵臓の機能が失われ、下痢便や体重減少、さらにインスリンを分泌できなくなることにより、糖尿病を発症することになります。また、慢性膵炎の方の中には膵液が通る管(膵管)に石(膵石)ができることがあり、この膵石が膵管に詰まることでさらに症状は悪化します。さらに慢性膵炎では、がん(特に膵がん)の合併が多いという事実があります。

【治療】進行を食い止めるには、禁酒(断酒)が必要となります。薬物療法や膵石を外から破壊する治療法もありますが、基本は断酒です。また、タバコに含まれるニコチンがアルコールと合わさると慢性膵炎の悪化を引き起こすことが知られており、禁煙も推奨されます。

慢性膵炎を発症しないよう、「節度ある適切な飲酒」を楽しみたいものです。なお、「健康日本21」では一日の飲酒量として、純エタノール20グラム程度が適量と提言しています。これは日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本、ワインならグラス2杯、そしてウイスキーならダブルで1杯に相当します。

いかがですか。私は日ごろ、患者さんに「一日1.5合。週2回休肝日を。冠婚葬祭以外は昼酒禁止!」と話しています。

(荒井 咲子 17.11.14.)