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やさしい病気の話

今回は『潰瘍(かいよう)性大腸炎とクローン病―炎症性腸疾患について』と題して高木 亮先生が話題を提供します。

炎症性腸疾患。小難しい名前のこの病気、耳にしたことがありますか?

どうせ珍しい病気なんだろう、そう思いがちです。

いえいえ、ところがこの疾患、日本では増えているのです。

炎症性腸疾患とは、一般に潰瘍(かいよう)性大腸炎とクローン病の二つの病気を指します。我が国の疫学調査では、潰瘍性大腸炎の人口10万人あたりの有病率は1991(平成3)年で18.12人であったのに対して、2009(平成21)年では84.5人と急増しています。クローン病においては、1991年の有病率人口10万人あたり5.85人であったものが、2009年には26.3人に増加しています。ちなみに、大仙市の人口は2015(平成27)年7月時点で約8万5千人です。単純に計算すれば…。いかがでしょう、決して珍しい病気ではないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

この疾患の原因はまだ不明な点も多いのですが、遺伝的要因とともに腸内細菌や食事抗原といった環境的要因が関与しています。日本人に増えている原因は、この環境的因子、特に食事の欧米化が大きく影響していると考えられています。主な症状は、下痢や血便、腹痛、体重減少等です。またクローン病では、肛門病変を伴うことも多く、痔ろう等を契機に発見されることがあります。治療は内服薬と栄養療法がメインとなりますが、最近では抗TNF-α抗体という注射での治療も行われています。

また、この疾患の特徴としては若年者の発症が多いということです。クローン病の好発年齢は10歳代から20歳代です。潰瘍性大腸炎では20歳代が発症のピークですが、幅広い年齢層で発症します。若いから大丈夫、そう言い切れないのがこの病気です。

検査としては、採血なども行いますが、内視鏡検査が重要です。

潰瘍性大腸炎はその名の通り、大腸にのみ起こる病気なので大腸内視鏡検査がメインですが、クローン病は肛門から口腔まで全消化管で起こり得る病気のため、大腸以外にも小腸や胃の検査も必要です。

大腸の検査は苦手、恥ずかしい、苦しそう、など皆さん敬遠しがちですが、最近の内視鏡関連の技術の進歩は著しく、苦痛を減らしつつ精密な検査ができるようになってきています。

当院でも最新の高精度拡大内視鏡を導入しました。また大腸内視鏡検査は全例で苦痛の少ないCO2送気装置を用いて行っています。

大腸の病気は癌だけではありません。何か気になる症状があれば一度医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

(高木 亮 17.7.19.)