ウイルス性の慢性肝炎にはB型肝炎とC型肝炎があります。日本にはそれぞれ約150万人の感染者(キャリア)がいると推定されています。今回はB型肝炎とC型肝炎に対する治療についてお話します。
B型肝炎の治療では1987(昭和62)年にインターフェロンという注射の抗ウイルス剤が世界で初めて日本で認可になりました。その後、2000(平成12)年からは内服薬の抗ウイルス剤による治療が可能になり、現在ではエンテカビルやテノホビルという内服薬を継続することで、副作用なくほとんどの症例で血中のウイルスを検出感度以下にすることができます。
そして、そのような状態を持続することにより肝がんの発症率は低下し、B型肝炎の5年生存率は肝硬変を伴わない人で97%、肝硬変の人でも92%と報告されています。このように、B型肝炎と診断されても内服を継続すれば心配のない時代になりました。
一方、C型肝炎の治療は1992(平成4)年にインターフェロン治療が開始となり、2001(平成13)年に内服薬のリバビリンが、2003(平成15)年に週1回注射のペグインターフェロンが登場しました。日本のC型肝炎はウイルスの種類により1型と2型に分類されますが、2004(平成16)年にペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が標準治療となった結果、1型では50%、2型では90%の方でウイルスの駆除が可能になりました。
その後、2011(平成23)年以降、その標準治療にプロテアーゼ阻害剤という内服薬が追加され、1型のC型肝炎の治癒率も90%まで上昇しましたが、治療効果が上がるにつれて副作用が強くなったことが大きな問題でした。しかし、2014(平成26)年9月、内服薬(ダクラタスビル、アスナプレビル)のみによる治療が可能となり、その結果、自覚的な副作用がほとんどなく90%の方が治癒するようになっています。今年は年内にさらに数種類の内服薬が認可になる予定であり、それらのウイルス駆除率は97〜100%と報告されています。C型肝炎はウイルスの駆除により肝がんの発症が抑制されることがわかっており、早めの治療が大事です。
以上のように、B型肝炎もC型肝炎も副作用の少ない飲み薬で治療できる時代になり、肝硬変や肝がんへの進展を抑えることが可能になりました。しかし、現在でも自分が感染していることをまだ知らない人がB型肝炎で90万人、C型肝炎で80万人いると推定されています。皆さんはご自分の結果を知っているでしょうか。B型肝炎はHBs抗原、C型肝炎はHCV抗体という血液検査をするとすぐに判明しますので、ぜひかかりつけの医師に確認してみてください。そして、もし陽性であれば早めに肝臓専門医を受診して治療が必要かどうか検討していただければと思います。
(三雅 浦人 16.11.24.)