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やさしい病気の話

今回は「「ケダニ」の今昔」と題して寺邑能實先生が話題を提供します。

ツツガムシ病は、古くから雄物川流域のアカツツガムシと、山菜採りや農作業で見られるフトゲツツガムシによるのがあり、病人もムシのことも「ケダニ」と言って多くの農民に怖がられ、今でも内小友に2カ所のケダニ神社が残っています。

私の家は内小友で代々ケダニ医者で毎年夏には多くの研究者が来ていました。ケダニは野ネズミ(畑ネズミ)の耳に吸着してるので、まずネズミを捕るのが仕事です。夕方、雄物川河川敷のネズミの穴の前に餌のサツマイモをつけたネズミカゴを置き、翌朝回収に行きます。ケダニはネズミの耳についていてネズミカゴを水盤の上に置き4、5日後に水に落ちたケダニを集めます。1匹のネズミに200以上のケダニが付いていることもあります。黒長靴で草むらに座っていると、約0.2ミリメートルのだいだい色のケダニが1分間に4〜5センチメートルの速さでぞろぞろ地面から這い上ってくるので、それを水でぬらした筆で取ります。

県によると、平成25年は県内で28人がツツガムシ病を発病(大仙市内では2人)しました。私は昭和55年から平成16年の25年間に30人の患者を治療しましたが、そのうち、アカツツガムシは16人でした。ケダニの中で病気を起こすのは1000匹中およそ1、2匹で、刺された人は不運というしかありません。ケダニに刺され発病する人は少なくなりましたが、刺される場所に行く人が少ないだけでケダニはまだまだいます。河川敷の野ネズミのいそうな場所の土を30センチほど掘ってバケツの水でかき回すと1〜2ミリの親虫が浮いてきます。この親虫が卵を生み、そして幼虫になりその数匹だけに毒を遺伝させ、人に吸い付いてツツガムシ病を引き起こすのです。ケダニが心配そうな場所に行って5〜7日後に高熱が出たら、すぐ病院でツツガムシ病の疑いで診てもらってください。早期発見、早期治療です。

平成25年に県内でツツガムシによる死亡患者が出たようです。個人情報がらみで以前のように詳しく新聞に出なくなりましたが、患者の方が刺された場所の地名だけでも発表してもらえば何かと注意し、予防と早期発見に役立つと思います。最近はいずれも減ることはいいことですが、何年も見ていないとなんとなく寂しいものです。

(寺邑 能實 15.11.10.)