「もの忘れはあるけど、年相応です」という言葉を患者さんやご家族からよく伺います。しかし、「年相応のもの忘れ」の解釈はかなり幅広く、重度の認知症の方のご家族からも「年相応だと思っていました」とお話しいただくことも少なくありません。
最近では、日本人の75〜79歳の約10%、80〜84歳の約20%、85〜89歳では3人に1人以上の方が認知症であるとの研究があり、高齢化の進んだ秋田県では、ごくありふれた病気の一つとなっています。市立大曲病院でも、初めて受診された方の統計をとると、10年前は3人に1人であった認知症の割合が、昨年はちょうど2人に1人となっており、目に見えて増加しています。
認知症は、現代の医学でも根本的な治療が困難な病気の一つですが、認知症の3分の2を占めているアルツハイマー型認知症においては、進行を遅らせる薬が数種類開発され使われています。これらの薬には、認知症がまだ軽いうちに薬を始めると、より効果を発揮しやすいという特徴があります。このことからも、なるべく早い段階での診断が重要です。
認知症患者さんのご家族を対象とした意識調査で、認知症ではないかと疑った症状は、多い順に『もの忘れがひどくなった』『判断力や理解力が衰えた(話のつじつまが合わない、テレビ番組の内容が理解できないなど)』『時間や場所が分からなくなった』『意欲がなくなった(ふさぎ込んで何をするのもおっくうがり嫌がる、身だしなみを気にしなくなったなど)』『人柄が変わった』『不安感が強くなった』などがあがりました。
同じ調査で「(もっと早く相談すれば良かったと後悔したが)早期に相談できなかった理由」は、多い順に『年齢のせいだと思っていたから』『単なるもの忘れで病気ではないと思っていたから』『本人が医療機関に行くのを嫌がったから』などがあがりました。これらを参考にすると、早い段階での治療につながるかもしれません。
豆知識として、アルツハイマー型認知症に対して有効であると言われている生活習慣・食習慣をご紹介します。
(大谷 和生 14.6.04.)