日本人の死因のうち、がんによる死亡が1位になって久しく、その数はまだ増加傾向にあります。
残念ながら秋田県では、がんによる死亡率が平成22年まで14年連続で全国1位となっています。一方で欧米では、がんによる死亡は徐々に減少しています。医療レベルに大差はないはずですが、健康診断の受診率がアメリカで80%であるのに対し、日本では30%に達していないことがこの違いの背景にあるのではないかと考えられます。
がんが死因となるケースで最も多いのが肺がんで、胃がん、大腸がんと続きます。しかし、がんの発生数自体は大腸がんが最も多く、次いで胃がんとなっています。つまり、大腸がんは治る可能性が高いがんなのです。治療するためには早期発見が必要ですが、そのための大切な手段が大腸がん検診です。
大腸がん検診では、一般に便潜血検査が行われています。これは、便の中にわずかにある血液の反応を調べるもので、通常2日間にわたる便を検査します。検査結果が1回でも陽性であれば、精密検査が必要になります。現在行われている精密検査は、大腸内視鏡検査のみか大腸内視鏡検査に大腸造影検査を加えて行われるものです。
胃や肺などで精密検査する場合は、胃カメラや胸部CTによる検査のため、当日の朝から絶食する程度の準備で済みますが、大腸の検査の場合、前日の食事にも注意が必要となり、当日には2リットルほどの下剤を飲まなければなりません。また、大腸の検査は、お腹に空気がたまるため苦しい検査です。そのため、便潜血検査で異常が見つかっても「痔(じ)があるから」「便秘していたから」などと自分を納得させて精密検査を受けない方が多いようです。
直腸がんやS状結腸がんなど肛門に近いがんは便秘や下痢などの排便異常がでたり、排便時に出血を伴うことで気が付くこともありますが、ほとんどの場合、がんがかなり進行しないと症状は現れません。そのため、症状が出てきている大腸がんは深刻なのです。
私見ですが、3年に1回大腸内視鏡検査を行えば、大腸がんで死亡する人は激減すると思われます。しかし、この検査は苦しく、場合によっては大腸に穴が開いたりすることもあります。だからこそ、安全にできる便潜血検査をできるだけ多くの人に受けてほしいと思います。
検査結果が陽性だった方は精密検査を受けてください。根治できるがんを見つけられるチャンスです。医療側も安全に、できるだけ苦痛のない検査ができるよう研鑽(けんさん)を積んでいます。
(佐藤 厚史 13.03.7.)