• Home
  • やさしい病気の話

やさしい病気の話

今回は「大腿骨(だいたいこつ)の付け根の骨折について~寝たきりにならないため~」と題して佐藤心一先生が話題を提供します。

寝たきりの原因の13%が骨折

馬は足の骨を折ると死んでしまうとよくいわれます。大森山動物園のキリンが足の骨を折り、それが原因で亡くなったという悲しいニュースもありました。では、人はどうなのでしょうか?
寝たきりの原因は、脳血管障害が最多の38%。次いで骨折が13%です。なんと約10人に1人が骨折のために寝たきりになるのです。さらに、骨折によって生命予後(余命など命に関わる予測)が10%も悪くなると報告されています。動物ほどではありませんが、人も骨折が命取りになる場合があることが分かります。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にご用心

年を取ると誰でも骨粗鬆症になるといわれますが、女性はホルモンの関係から男性に比べて急激に進行します。今回のテーマ、大腿骨(股間接と膝関節の間の太い骨)の付け根の骨折についても、女性の方が男性よりも3倍多く発生しています。
現在、毎年10数万人がこの部分を骨折しており、高齢化が進む2030年には25万人にも及ぶと予想されています。
骨折を予防するため、骨粗鬆症と診断されたら、早めに薬を飲むことが大切です。また、骨粗鬆症の方に処方されるビタミンDの薬で転倒が減るという報告もあります。

負担を掛けない工夫を 

通常、骨折は転倒した際の怪我が原因で生じますが、中には自然に折れてしまうものもあります。
よく「草むしりをした後から股関節が痛くなって、だんだん歩けなくなってきた」という方がいます。若い人ならよいのですが、長時間しゃがんだままの姿勢は大腿骨に負担を与え、いつの間にか骨が折れてしまうことがあります。
初期には、レントゲンで骨折が分からないこともありますが、そのままにすると完全に折れてしまいます。完全に折れる前であれば、手術をせずに治すこともできますが、折れてしまうと手術が必要になります。
草むしりなど大腿骨に長時間負担をかける姿勢を続ける時は、小さい椅子を用意するなど無理のない姿勢で作業することが大切です。

転倒予防を心掛けよう

骨折の原因の90%が転倒ですが、そのうちの70〜80%が家の中でのものです。段差をなくしたり、階段やトイレなどに手すりを付けるのも大事ですが、家の中の整理整頓が最も大事です。転倒の原因は「ふらついた」ためが最多です。普段から転倒を繰り返している方には周りでも注意してあげましょう。
普段から体調管理に気を配り、軽い体操を習慣にするなど転倒予防を心掛けましょう。

(佐藤 心一 13.01.15.)