平成23年3月11日午後2時46分、東日本大震災が起こりました。この大震災によって、岩手、宮城、福島を中心とした東北地方に甚大な被害がありました。
さて、このような大震災に遭ったときに、人にはどのような心身の反応が生じるのでしょうか? また、被災者の心のケアとして、大切なことは何でしょうか?
地震は、いまだに予測困難であり、一瞬にしてすべてを失う可能性があります。そのために、地震は最も大きな衝撃を与える自然災害です。震災の体験は、脳の中につらい記憶として焼き付きます。そして、思い出すたびにその当時の恐怖と不安がよみがえります。
心身は過覚醒(かかくせい)と言われる状態になり、不安で落ち着かず、悪夢や不眠に悩まされます。身体的には、血圧は上昇して、頭痛、めまいや動悸(どうき)などさまざまな症状が出現します。
これらは、程度の差はあれ、すべての人に生じる反応です。そして、多くの場合には、数日で自然に回復します。しかし、大切な人と死別した体験、生死を分ける体験など被災の状況によっては、回復が遅れて、心身の不調が長引きます。数日以上4週間以内持続する場合には、急性ストレス障害(ASD)と診断されます。さらに、4週間以上持続する場合には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されます。これらの障害によって、うつ病やパニック障害などを併発する場合があります。
震災後の心のケアにおいて大切なことは、“傾聴(けいちょう)と共感”の態度と言われています。つまり、被災者の言葉に耳を傾けて、被災者の苦しい立場や状況を理解することが必要です。
被災者に対しては、被災の状況を詳しく聞き出そうとしたり、話すように促すことは良くありません。また、「命があってまだましだ」「もっと大変な人がいる」「頑張りなさい」など被災者の苦しい立場を理解していない言葉も良くありません。周囲の我々は、被災者の個々の立場や状況を理解することに努めて、「辛かったですね」「苦しかったですね」「無理はしないでくださいね」と被災者の視点で言葉を選ぶことが必要です。
私は、平成23年4月18日から2日間、岩手県釜石市へ医療支援に行きました。被災者は、厳しい現実と避難生活を強いられて、その辛さや頑張りは限界だと感じました。
私は、被災者の言葉に耳を傾けて、共感の言葉を必死で探しましたが、逆に「秋田からありがとう」と感謝の言葉を何度も頂いたことが忘れられません。
一日も早い被災地の復興を切に願います。
(善本 正樹 12.10.04.)