• Home
  • やさしい病気の話

やさしい病気の話

今回は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)について~大きなイビキにご注意を~」と題して八嶋 信浩先生が話題を提供します。

平成15年の山陽新幹線運転士の居眠り事故は睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病名を広く知らしめるきっかけとなりました。
しかし、この病気に対する多くの人の認識は「肥満」とか「居眠り運転」程度で、実際にどのような病気なのかは理解されていないのが現状です。
この病気の問題点は昼間の眠気による自動車事故だけではありません。無呼吸が繰り返し起こることで、脳や心臓の低酸素状態がやがてはさまざまな臓器に障害をもたらし、脳卒中や心筋梗塞、心不全、不整脈といった心血管系疾患の原因となる可能性があることも問題です。
その背景として、最近の研究ではSASには肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などいわゆる生活習慣病を合併するケースが多いということが明らかになってきました。

一般に呼吸が10秒以上止まっている場合を無呼吸と言います。この無呼吸が一晩(7時間)に30回以上、あるいは1時間当たり5回以上ある状態をSASといいます。
これまでは、「SAS=肥満の人がなるもの」と考えられてきましたが、最近では肥満でなくてもSASになることが分かっています。これは日本人など東アジア系の民族では、やせていてもアゴが小さいなどの顔の特徴から気道の面積も狭く、無呼吸を起こしやすい人が多くみられると考えられています。

SASの特徴的な症状は睡眠中の呼吸の停止と大きなイビキ、その結果、日中の眠気や起床時の頭痛、熟睡感の欠如などが見られます。
重症のSASを無治療のまま放置すると9年後には4割の人が心疾患や脳卒中、交通事故などで亡くなっているという報告もあります。

SAS特有の眠気は交通事故を起こす危険もあり、早期に適切な治療をすることが大切です。
きちんとした治療を行えば、眠気やイビキはもちろんのこと、生活習慣病や合併症についても改善することが分かっています。また、それらの病気のため服薬している場合、薬を減量できることもあります。心当たりのある方は専門の医療機関を受診しましょう。
あなたのイビキや眠気が命を縮める原因になることもあるのです。

(八嶋 信浩 12.09.10.)