2008年4月から基本検診が特定検診に変わりました。それに伴い、検査項目だった眼底検査が選択項目に変わりました。今までは、基本検診時に眼底カメラを撮ることで網膜や硝子体などの状態が詳しく分かり、いろいろな病気を見つける事ができましたが、現在は眼低検査を選択した場合のみ、眼科で検査することになっています。
しかし眼科への眼底検査の依頼はほとんどないのが現状です。実際、以前の基本検診では受信者数の97%以上が眼底検査を受けていましたが、特定検診になってからの受診率は約3%です。
このような状況ですので、今回は、日本での中途失明原因の上位である糖尿病性網膜症と緑内障についてお話します。
糖尿病性網膜症は、糖尿病が原因の病気です。網膜の血管が弱くなって出血や腫れを生じ、その後、新生血管が発生して増殖膜が張り、網膜剥離を起こして失明する事がある病気です。
この病気の恐ろしいところは、自覚症状の無いまま眼底出血が起こり、自分で見えにくいと思った時は病気がかなり進行している場合が多いということです。主な治療は、網膜をレーザー光線で焼くことにより新生血管の発生を予防するものですが、あくまで進行を食い止めるものです。さらに進行した場合は、硝子体手術などの治療を行います。
緑内障は、眼圧(眼球の硬さ)が高くなることによって視神経という網膜の情報を脳に伝える神経が障害され、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
症状は、急激に眼圧が高くなることによる頭痛や眼痛、吐き気、嘔吐などです。
すぐに治療しなければ失明につながる急性狭隅角緑内障や、自分では気が付かないうちに視野が狭くなり失明する場合がある開放隅角緑内障が主ですが、最近では、眼圧が高く無くても緑内障になる正常眼圧緑内障という病気も問題なっています。また、緑内障は40歳以上の約5.8%の人が発病しているといわれています。
治療法は眼圧を下げる点眼や内服、レーザー治療、手術などがありますが、あくまで視野障害の進行を遅らせるだけものです。
このように、糖尿病性網膜症と慢性の緑内障は、本人が気付かないうちに進行し、治療しても元に戻る事が無い場合が多く、失明につながる恐ろしい病気です。
眼底検査を受けていない方や、特に糖尿病疾患の方、40歳以上の方は眼科での眼底検査をお勧めします。
(木村 真也 12.01.18.)