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やさしい病気の話

今回は「ストレスと上手くつきあうために~自分をよく知るということ~」と題して
関根 篤先生が話題を提供します。

「健康とは、単に病気ではない、虚弱ではないということではなく、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態」を指す。
これはWHO(世界保健機関)が1946年に提唱した健康の定義です。現代社会ではこの精神的、社会的健康が重要視されています。
なぜなら、私たちのすむ社会にはさまざまな考え方や価値観をもった方々がいて、お互いの人間関係やコミュニケーションの確立が複雑なものに変化し、さまざまなストレスが産み出されることが少なくないからです。
ところで、ストレスとは何でしょう?ストレスとはもともとは工学用語で、「外からの刺激による生体側の歪み」と「刺激に対抗して歪みをもとに戻そうとする生体側の反応」を指します。ストレスを生じさせる外界からの刺激はストレス要因と総称され、そのなかでも職場や家族内の問題といった社会的ストレス要因が多くなっています。

人がストレスに対して自分自身を適応させる過程で葛藤が生じます。人はストレス要因があると不安・焦燥・抑うつなどを心に感じるものですが、この心の変化は強さを客観的に測れない、個人差が大きい、原因が特定しにくい、など複雑なものです。
さらに、ストレスによる反応は心理面・身体面・行動面においてみられるものですが、それがストレスによって生じたことを自分自身はなかなか気づきにくいという厄介さもあります。心の健康問題にはこのような特殊性があるのです。

さて、私たちがストレスと上手くつきあい心の健康を保つためにはどうすれば良いのでしょう。
一つは、ストレス要因とストレス反応との関係を理解し「いつもと違う自分」に早く気付き「自分を見つめ直す」ことが重要です。つまり、ストレスの原因が何によるものかを把握し、ストレス因子による心や体、行動の変化をストレス反応として認知することです。それにより、ストレス要因に対して状況が好意的に変化するような働きかけやストレス反応がストレス因子によるものと正しく理解していないことによる認知の歪みの修正が可能になるからです。
もうひとつは、「自分をよく知る」ことが重要です。
人は、挫折や失敗を糧にしながら学ぶことで、自分をよく知る機会が得られ、人格的な幅を拡げることが出来ます。一日一日を大切にしながら、自分を謙虚に振り返ることが重要になります。

私たち精神科医は、患者さんの症状をとおしてその人が「自分をよく知る」ためのお手伝いをしています。悩むのは心が弱いからだ、恥ずかしいことだ、など自分自身に偏見をもつことは避けましょう。
心に不調がある時は私たちと一緒に考えていきましょう。

(関根 篤  11.10.17.)