「胃が痛い」「胃がもたれる」「食後の不快感」などの症状は誰でも一度は経験したことがあると思います。このような症状が長引き、いろいろ検査を受けたが何も異常が見つからず、原因が確認できないことも少なくないと思います。以前はそのような時、胃下垂、慢性胃炎、神経性胃炎などの病名がつけられていたのですが、最近では機能性ディスペプシアと呼ばれるようになっています。ディスペプシア(dyspepsia)とは聞き慣れない言葉ですが、直訳すると「消化不良」という意味で、今では前記のような上腹部(みぞおち)に起こる不快な症状をまとめてディスペプシアと呼んでいます。そして内視鏡検査などで潰瘍やがんなど明らかな病気がないにもかかわらずディスペプシア症状がある時、機能性ディスペプシアと診断されるわけです。
ディスペプシア症状は胃や十二指腸はもちろん、肝臓、胆のう、すい臓の病気でも起こるので内視鏡検査の他、腹部超音波検査、採血、腹部CT検査などを行い病気がないことを確認することが大切です。
機能性ディスペプシアは「機能性」という言葉からも想像されるとおり、検査ではわからない胃の機能(働き)が異常となることで起こると考えられています。胃の働きは食物を受け入れ、貯蔵し、胃酸を分泌して食物をかき混ぜ、少しずつ十二指腸へ送り出すことで、これらは自律神経やホルモンにより調節されています。そして自律神経やホルモンのバランスを乱し胃の働きを低下させるものとして、暴飲暴食、過労、ストレスなどがあり、最近ではヘリコバクター・ピロリ菌の感染も挙げられています。
機能性ディスペプシアの治療は薬物療法と食生活を含むライフスタイルの改善の両面から行います。薬としては、胃の機能を改善する薬、胃酸を抑える薬があり、場合によっては抗不安薬や抗うつ薬が使われることもあります。また、規則正しい食事、ゆっくりよく噛んで食べる、腹八分を心掛ける、ストレスとうまく付き合い心身の疲れをためないことなどが重要となります。
現代は飽食の時代ともストレス社会とも言われており、ディスペプシア症状で悩んでいる方は多いと思います。最近胃が疲れていると感じた時は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。
(石井 伸明 10.09.03..)