膝関節には通常でも3mlくらいの粘り気のある液(関節液)が入っていて、主に潤滑油のはたらきをしています。さまざまな原因によりこれが過剰にたまった状態を関節水腫といいます。この場合の“水”は炎症の結果生じた浸出液がほとんどで黄色味がかっており、通常の関節液の成分とは少々違います。すりむいた傷の表面からジクジクとしみ出てくる液や、風邪をひいたときに出る鼻水と同じようなものです。
中高齢者の膝に水がたまる主な原因をあげてみます。
関節の軟骨が外傷や加齢変化で傷んだり、半月板というクッションが断裂したりすると、関節のふくろが炎症を起こして水がたまります。よく「水を抜くとクセになるのでは?」と聞かれますが、抜くとクセになるわけではなく原因が解決されていないから水腫が続いているのです。
関節のふくろの病気です。慢性的に水がたまった状態になり、関節が徐々に破壊されていきます。現在はさまざまな良い薬が開発され、炎症のコントロールが可能となる例も多くなってきています。
痛風は血液中の尿酸の濃度が高くなり、溶けきれない尿酸結晶が炎症をおこして激烈な痛みを生じるものです。結晶は温度の低いところでは特に溶けにくいため、発作は足に生じることが多いのですが膝におきることもあります。
偽痛風(ぎつうふう)は高齢者に多く、痛風以上によくみられます。変性した軟骨などにピロリン酸カルシウムとよばれる結晶が沈着し、これが何らかの引き金(外傷や病気、脱水など)によって強い炎症を起こします。痛風のニセ者と呼ばれるだけあって痛みは強く、熱がでたりして化膿性関節炎とまぎらわしい場合もあります。偽痛風の場合、症状は3~7日で落ち着き継続的な治療なども不要です。なお、せぼねのつなぎ目も関節と同じ構造をしており、偽痛風がクビの骨に生じると寝ちがえをひどくしたような強い痛みが生じることがあります。
最も治療を急ぎます。関節に膿(ばい菌と大量の白血球)がたまった状態で、なるべく早く膿を外に出して抗生剤の治療を行う必要があります。
たまった水の見た目からおおよその見当がつきます。1→4の順に濁った水が引けることが多く、濁りは主として白血球の数を反映しています。濁りがひどければ白血球が多く炎症も強いということになります。いろいろな原因で水がたまり、原因によって対処法も異なるということをご理解ください。
(梅原 寿太郎 08.08.29.)