「病気を治す」ということは、「“医師”が“病気の患者さん”をさまざまな方法で診断・治療する」ことであろうと思います。
この“医師”を「臓器専門医」と「かかりつけ医」に分ける考え方があります。「臓器専門医」とは、例えば、心臓を患っている佐藤さんや鈴木さんの“心臓病を専門的に診察”する医師を指し、一口でいうなら「患者さんは変わるが、診療する病気は同じ」ということです。一方、「かかりつけ医」とは高橋さんという患者さんのある時は胃腸の病気を診療、ある時はインフルエンザを診療する つまり「同じ患者さんに起こる様々な病気を診察する」医師を指します。かかりつけ医が対応できない病気や、治療効果が不満足な場合は臓器専門医に紹介(病診・診診連携 つまり病院と診療所・診療所と診療所間の病気についての紹介 連携 のことをいいます)するのは当前ですし、かかりつけ医と臓器専門医の区別が判然としない場合、かかりつけ医が臓器専門医になる場合(つまり他科の医師から専門分野について紹介される)もあります。この臓器専門医とかかりつけ医を上手に使い分けるのが“賢い患者さん”ということになります。
次に“病気の患者さん”について考えてみましょう。乱暴な言い方ですが、例えば膀胱炎の場合、イヤがる患者さんを押さえ込んでお尻にブスリと抗生物質を注射すると大体治ってしまいます。つまり患者さんの病気を治そうという意欲が低くても治る病気があり、こういう治療を「医療モデル」といいます。一方、患者さん自身の病気を治そうとする意欲とそれに基づく生活習慣の改善が無ければ、結局は治すことが出来ない病気・治療もあります。これを「成長モデル―成長を促す治療―」といい、今流行のメタボリック症候群など生活習慣病の多くがこれに該当します。更年期になって女性ホルモンが無くなり、骨がスカスカになる骨粗鬆症を例に説明しましょう。現在この骨粗鬆症を治療する素晴らしいお薬が沢山ありますが、いくらこういった薬をキチンと飲んでも、 カウチ・ポテトよろしく“まったく運動せずソファーに寝そべってスナック菓子をほおばる“のでは治療にならないのです。
つまりかかりつけ医や臓器専門医を賢く選んでも、さらにその医師がどんなにいいお薬を使って頑張っても治らない病気があります。病気を治すということについて一度考えてみましょう。
(田口 圭樹 07.03.07.)