最近のマスコミの報道でご存じの方が多いと思いますが、日本脳炎ワクチンについて接種中止勧告が出されましたのでご説明致します。
平成17年5月30日、厚生労働省は日本脳炎の予防接種について、接種推奨を中止するよう求める緊急勧告を都道府県に対して発令しました。理由は、昨年7月山梨県甲斐市の中学生が、日本脳炎ワクチン接種11日後にめまいや頭痛を発症し、その後「急性散在性脳脊髄炎(ADEM)」と診断され人工呼吸器をつけるほどの重体になったことを受けてのことです。この中学生の病気の発症について、ワクチンとの因果関係は医学的に確定されてはいません。しかし、ワクチンとの因果関係を否定することができないこと、及び今回の例が過去に比べて極めて重い症状であったことを重視したものです。
平成6年度から現在までに、日本脳炎ワクチン接種後にADEMがみられたという報告は21例あります。そのうち予防接種法に基づく健康被害救済制度の認定を受けた方は14例です。しかしこれらすべてが日本脳炎ワクチンとの因果関係は明らかになっていません。ADEMの発生率は、70~200万回の接種に1回程度とされています
何らかのウイルスの感染後あるいはワクチン接種後に、まれに発症する脳神経系の病気です。ワクチン接種後の場合は通常の接種後、数日から2週間程度してから、発熱、頭痛、けいれん、運動障害などの症状があらわれます。適切な治療で完全に回復する例が多く良性の疾患とされていますが、後遺症を残す例が10%ほどあるといわれています。
現段階では接種は控えていていただくのがいいと思います。今後新型ワクチンが開発されると思われますが、新たな方針が厚労省から出されるまでお待ちください。しかし、日本脳炎の流行地域(朝鮮半島、台湾、中国、ベトナムなど)へ渡航する予定がある方は、今回の事例を理解した上で、接種に対する同意書に署名すれば接種できます。
日本国内では1970年以降患者数は著しく減少しています。この理由は予防接種の普及のほかに、ウイルスを媒介する蚊のウイルス保有率の減少、環境改善による蚊に刺される機会の減少など複数の要因の組み合わせの結果と考えられます。このため予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少していると考えられます。
特に秋田県では1981年以降感染が確認されていないので、多大な心配は無用と思われます。
(吉村 総一 '05.06.24 )