緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が高くなり、視神経を傷め、視野(見える範囲)が狭くなり、放置すると失明のおそれのある病気です。
緑内障には急性と慢性のものがあります。急性緑内障は、激しい痛みを伴い、突然視力が低下する恐ろしい病気です。しかし、眼科医がしっかり診断し、早期に適切な治療を行うと、大半は元通り回復できます。慢性緑内障は、非常にゆっくり進行するタイプで、自覚症状はかなり進行しないと出てきません。緑内障の中で、最も多いもので、検診や人間ドックなどでの検査で異常を指摘され、発見されることが多い病気です。
眼球の中は、房水という水が循環して栄養を運んでいます。この流れが何らかの理由でうまくいかず、バランスが崩れ圧力(眼圧)が上がってしまうと考えられています。この眼圧も緑内障発生の重要な因子ですが、最近は眼圧が上がらない緑内障が多く見つかり、眼圧以外にも年齢的な変化、血流障害などが考えられていますが、原因をはっきりさせるには、もう少し時間がかかりそうです。
急性緑内障の症状は、前に述べたように、急激な眼痛や頭痛、電灯の周りに虹が架かって見えたりする光輪視、霞などがあげられます。時には吐き気が伴い、消化器の病気と間違われることもあります。
慢性緑内障は、発病してもかなり進行するまで自覚症状はありません。かなり進行すると視野に暗点(見えない点)が出ますが、これでも気づかない人が多数いらっしゃいます。痛みのような強い症状は全くなく、見にくいとか目が疲れるなどの症状がほとんどです。進行してしまった症状は、回復しません。
自覚症状が出る前でも、目の神経などに特有の変化が出てきます。健診や、人間ドックでは、この変化を見て注意を促します。このようなときは、眼科医で検査を受けてください。
緑内障に関する大がかりな疫学調査が平成12年に行われ、40歳以上の約6%に緑内障が見つかっています。年齢が上がると有病率も上がり、70歳以上では13.11%と上昇します。このほとんどが慢性の緑内障でした。
慢性の緑内障は、発病から失明まで数十年かかるといわれています。自覚症状も少なく、自覚症状が出てきたときは既にかなり進行した状態のことが多く見受けられます。一度出た異常は、消えることがありません。早期発見、早期治療が重要になります。健診で異常が見つかった方は、眼科で精査を受けてください。
検査は、視力、眼底検査や眼圧の検査を中心に、年1~2回視野の検査を行います。期間の長い病気ですから、定期的にかつ持続的に行うことが大事です。
急性の緑内障は、早期にもしくは予防的にレーザー治療を行うことによって、発症を抑えることが出来ます。
慢性緑内障は、通常は点眼薬の治療から開始します。以前と比較して、点眼薬も多様になり、治療の選択が広がりました。大半の人は点眼薬だけで眼圧を下げ、進行を防ぐことが出来ます。点眼薬が効かなかったり、病気が進行するようであればレーザー治療や手術を行うときがあります。現時点で、慢性緑内障は治癒できる病気ではありませんが、各種の治療を組み合わせて、進行を止めることは出来ます。持続的な治療と、定期検査が最も重要になります。
高橋 久志 '04.03.01