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やさしい病気の話

今回は「婦人科検診」と題して田口 圭樹先生が話題を提供します。

”目からウロコ”の婦人科検診のお話

「がんを予防する方法」はあるのでしょうか?「食事などに気をつけることで100%がんにならない」生活様式は残念ながらありません。今の所「がんの早期発見・早期治療」が最も有効であるとされています。つまり、がん検診こそががんを予防する最良の方法です。
婦人科で診療するがんについての最近の話題は

  • 子宮頚がんの患者さんの増加と若年化
  • 秋田県でも平成14年度から卵巣がん検診が実施されている

などが上げられます。今回は婦人科がん検診についてのお話をさせて下さい。
Q&A方式で記載しましたので少し勉強してみましょう。

Q1.「婦人科がん検診」ってなんですか?何が分かりますか?

A1.子宮頚(けい)がん・子宮体(たい)がん・卵巣がん検診の3種類があります。子宮頚がん検診では子宮頚がんはもちろん、異形成(いけいいせい)といって子宮頚がんになりやすい病気があるかないかも分かります。子宮の入り口(子宮頚部といいます)から木製のへらで細胞をとりますが、痛みはほとんどありません。自己採取法といって自分で細胞を採取する方法もありますが、正確ではないためお勧めできません。
子宮体がん検診では妊娠すると赤ちゃんが育つ部分である子宮体部のがんの有無が分かります。子宮体部から細胞を採取してがん細胞があるかどうかを検査します。卵巣がん検診では卵巣がんや卵巣のう腫などの良性卵巣腫瘍、子宮筋腫があるかどうかが分かります。経腟超音波診断装置を用いますが、これはちつから細い超音波の器具を入れますけれども痛みは殆どありません。

Q2.子宮頚がんについて教えて下さい

A2.子宮頚部といって、子宮の入り口に発生するがんです。いわゆる「子宮がん検診」といった場合は、この子宮頚がんを見つけるための検診を指します。女性生殖器に発生するがんの中では乳がんに次いで多いがんです。この子宮頚がんは子宮頚部の細胞に何らかの刺激が加わり、そこにHPVというビールスが感染して発症すると考えられています。このHPVは性行為でうつるビールス(性感染症)であるため若い方に子宮頚がんの患者さんが多いわけです。
初期では出血などの症状はまったく認められません。妊娠回数の多い人に多いと言われています。ここ数年死亡率は減少していたのですが、最近の傾向として
1)死亡率の上昇 
2)若い人に多い(なんと高校生の患者さんの報告もあります)
が上げられています。したがって若くても性行為の経験がある方は検査を受けておいた方がいいでしょう。

Q3.子宮体癌についてもお願いします

A3.子宮体部といって妊娠すると赤ちゃんが育つ場所に発生するがんを見つけるための検診です。妊娠回数が少ない人や生理不順の人に多いがんで欧米では「尼さんのがん」と言われています。主に更年期以後に見られるがんです。普通の子宮がん検診(つまり子宮頚がん検診)では発見することが出来ないと思ったほうがいいでしょう。
更年期以後で出血(赤いとは限らず、茶色・ピンク・黒いおりもの はすべて出血です)がある方はこの検査をぜひ受けて下さい。

Q4.卵巣がんについてもぜひ…

A4.卵巣に発生するがんを見つけます。経腟超音波診断装置というエコーを用いた検査によります。前にお話しましたが痛みは殆どありませんし、放射線ではありませんので被爆の危険はまったくありません。卵巣は"沈黙の臓器"と言われており、卵巣がんは特に症状が出にくく、もちろん初期では無症状です。秋田県はこの卵巣がん死亡率が全国でもトップクラスです。卵巣がんになりやすい方・なりにくい方は以下のように言われています。

  • 卵巣がんになりやすい方:親が卵巣がんだった・お産をしていない・不妊症・動物性脂肪をたくさん摂取する
  • なりにくい方:たくさん子供を生んだ・ピルを使っているまたは以前使った経験がある・子宮を手術で摘出した

Q5.秋田県の卵巣がん検診の"効果"について教えて下さい

A.5.卵巣がん検診の"先進県"であるお隣の青森県では、受診者8000人に1人の割合で卵巣がんが発見されますが、秋田県はまだ卵巣がん検診を開始して間もないため1万2000人に1人と卵巣がん発見率は低率です。今後受診者の増加に伴い"効果"が出てくると考えられます。

Q6.婦人科がん検診ってどれ位役立つのですか?

A6.いい質問です。「がん検診を受ける意味がある」という場合、その検診を受けることによりそのがんの「死亡率が減少するかどうか」で検診の意義を判断するのも一つの方法です。そういう意味では子宮頚がん検診は死亡率減少効果がある事がはっきりしていますが、超音波を用いた現在の卵巣がん検診については受診者がまだまだ少ないためもあって効果については不明です。一方、問題になっている触診(触っておこなう)のみの乳がん検診は死亡率低下に貢献するという面では「効果がなさそうだ」という評価になっています。

いずれにしても自分の受診した検診では「何が(どういう病気が)分かって、何が分からないのか」をよ~く分かっておく事が大事です。
皆さん 検診を受けましょう!

(田口 圭樹 '03.12.04)