2001.09.29 中島 康先生
わが国では肝がんの患者数が増加傾向にあり、その約80%がC型肝炎に起因すると推測されています。C型肝炎はその予防、治療、肝がんへの進行防止、肝がんへの治療などについて近年急速な進歩がみられ、注目されています。
C型肝炎ウィルスの血液を介した感染によって起こります。輸血(特に平成元年以前)、適切な消毒がされていない注射器、注射針の使用、刺青、医療従事者の針刺し事故などが原因となります。実際には原因が特定できないことも少なくありません。
しかし、C型肝炎ウィルスは感染力が非常に弱く、日常生活での感染はほとんど心配ありません。夫婦間の感染も極めて稀とされています。
C型肝炎ウィルスに感染すると、1~2ヶ月の潜伏期間ののち、発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状が出現し、急性肝炎となります。しかし、症状がほとんどなく、気づかない場合も少なくありません。
急性肝炎の60~70%が慢性肝炎へと移行します。
慢性肝炎になると、ほとんど自覚症状がなく、血液検査をしなければ肝炎であることがわからないことが多いです。
何も治療しなければ、20~30年の経過で肝硬変、肝がんへと進行する場合が少なくありません。
C型肝炎ウィルスに感染しているかどうかは、血液検査(HCV抗体検査、HCV-RNA検査)で診断することができます。陽性の場合は、肝機能検査や画像診断(腹部エコー検査など)で肝炎の進行度を検査し、適切な治療を検討します。
インターフェロン治療:C型慢性肝炎に対して行われます。現在のところ、ウィルスを排除するには唯一の方法です。ウィルスの排除に成功するのは全体の30%くらいですが、ウィルスの量や遺伝子型によって治療効果に差があります。
肝庇護療法:肝臓の炎症を抑え、ALT(GPT)の改善を持続させる治療です。肝炎の進行を抑制すること、肝がんの発生を抑制することを目的とします。グリチルリチン製剤、胆汁酸製剤、漢方薬などが用いられます。
肝がんの治療:外科的治療(手術で肝がんを切除)、内科的治療(エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法、肝動脈寒栓療法など)があります。
年間3万人を越える人が肝がんで死亡しています。C型肝炎の治療の目的は、この人数を減らすことにあります。過去に輸血を受けたことのある人、40歳以上の人、肝機能異常を指摘されたことがある人は、一度はC型肝炎抗体検査を受けることをお勧めします。
(中島 康)